》職場めぐり《 【資料】CRL NEWS, 1985.11 No.116
開聞岳と40年
山川電波観測所「高さこそ劣れ,ユニークな点では,この山のよう なものは他にないだろう。これほど完壁な円錐形も なければ,全身を海中に乗り出した,これほど卓抜 な構造もあるまい。名山としてあげるのに私は躊躇 しない」日本百名山の著者はこう評した。この春,環境整備のため雑木を一掃したら,開聞 岳が久し振りに全姿を現した。それは西の空に美し い山容である。山川電波観測所とこの山との縁は来 年の7月で満40年になる。観測所もすっかりこの地 に根を張った。
電波観測管理室が電離層観測の老舗なら,観測所 はさしずめその分家と言えよう。時代の変遷は少し ずつ観測所の業務を変えてきた。山川も他の観測所 同様多角的に手を広げている。しかし,いまでも大 黒柱は電離層観測である。もちろん他の観測所とは ネットワークのきずなで結ばれている。それだけに 今日,観測所としての特徴を作り出すのは容易でな い。
山川は現在,次の五つの仕事を抱えている。電離層定常観測:観測所の歴史が刻まれている。すでに100万枚を超えるイオノグラムを世に送り出 した。電離層情報に対する社会的ニーズは低下して きてはいるが,太陽地球環境の監視を目的とする電 離層観測の意義は今日も変わらない。いま曲がり角 にあることは確かだが,9-B型観測機はいまも動 き続けている。
HFドップラー観測:MAP(中層大気観測計画) 参加項目の一つである。目的は大気波動の観測で, JJY5波の電離層伝搬波を対象としている。
遠距離FM放送波の受信:テレビ混信の元凶と言 われるEs層の正体は依然として不明である。その手 がかりを得るための国内観測網に組み込まれている。
シンチレーションの観測:衛星回線の通信障害と してクローズアップされてきた。ETS-Ⅱ 136MHz 波を受けている。また,全電子数を求めるファラデ ー回転の同時観測も行っている。
衛星関連実験:たった一つ電離層とは関係がない。 開始はBS,CS実験の幕明けにさかのぼる。かつて 経験しない,全く異質の分野であった。今日他の業 務と見事に共存を果している。20GHz波帯の伝搬デ ータ取得,コンピュータネットワーク実験を行う。
職員数は6名。ずい分少なくなった。顔ぶれを紹 介しよう。満留は昨年から釣キチに急変した。2児 のパパになってはりきっている。國武は公私共に多 忙である。農園を開き,夜はバスケット,ロードレ ースにも遠征した。斎藤は一途にへラブナ。本物で ある。連休になると,釣場を求めて九州一円を車で 走りまわる。西牟田は南国男に似合わず大人的風格 がある。暑さにはめっぽう強い。岩元はいまは貴重 な生えぬき。紅一点というべきか。大山は最後のご 奉公にと目下山川の年史作りに精出している。(大山 治男)

後列左より 満留、岩元、斎藤
前列左より 西牟田、大山、国武
【資料】CRL NEWS, 1985.11 No.116