横須賀 無線通信研究
開設の経緯
これらの政策により、我が国の、アジアの、そして世界の情報通信技術の研究開発拠点となることを目指して誕生したのが横須賀リサーチパーク(YRP)である。YRPは、昭和62年に郵政省の提唱により検討が開始された民活プロジェクトで、横須賀市と京浜急行が約4割を出資して設立された「株式会社横須賀テレコムリサーチパーク」が開発整備を行った。1997年10月には研究開発棟となる1番館、2番館および生活支援棟がオープンした。
CRL横須賀無線通信研究センターは、横須賀リサーチパーク(YRP)に本拠地を置く新たな組織として、当所の宇宙通信分野を除く総ての無線通信部門が移転し、心機一転新たな研究戦略によりYRPの中核的研究拠点を目指して研究開発を行うことになった。移転前の1997年7月に小金井本所に本拠を設置、大森慎吾が横須賀無線通信研究センター長に発令され、1998年2月には、第2研究チーム、第4研究チームおよび企画管理室が移転し、順次無線伝送研究室、電磁環境研究室、通信ディバイス研究室の移転が計画された。当センターはこの一番館の2階と3階(延べ面積約2500㎡)に入居する。YRPには、既に国内外約40社あまりの研究機関の進出が決まっており、国際的な共同研究、研究交流が活発に行われる物理的環境が整いつつあった。
「電波利用料」の利用により利用者への研究成果の還元が求められ、産学官連携の新たな研究開発スタイルを進めるとの基本理念に基づき、移動通信研究部門のYRPへの移転を決め、1998年2月にYRP壱番館に開設した。
開設前後の詳細は下記の資料をご覧ください。
【資料】「YRP 5周年記念特別号」、YRP研究開発推進協会、(株)YRPテレコムリサーチパーク、YRP NEWS 2
CRL横須賀無線通信研究センター 新たな研究戦略と研究体制
横須賀無線通信研究センターはこのような絶好な研究環境のもと、産官学連携の中核的役割を果たすため、以下のような基本理念を立てた。
【基本理念】
- 無線通信研究の中核的拠点を目指すYRPでの中核的役割を担う。
- 将来の国際標準になり得るようなユーザ指向の戦略的研究開発を国際化の視点で行う。
- 産官学との融合、国際的な連携を進める為、思いきった新たな研究スタイルを試み、国立研究所の新たな役割を示す契機にする。
このような方針のもと、当面以下の重点研究テーマを考えた。
- 新たな通信システムへの挑戦
成層圏高速無線通信ネットワークの研究やインテリジェント交通システム(ITS)の研究など
- 移動通信の高度化を目指して
ミリ波帯高速無線アクセスシステムの研究やマイクロ波帯統合移動通信システムの研究など
- 安全な電磁波の利用のために
機器の電磁波障害、電磁波の人体への影響の研究など
これらの具体的な研究内容、将来の研究テーマについては上記の基本方針に沿って国内外の機関と密接に連携し研究計画立案の段階から産官学が参加する共同遂行型の大型プロジェクトに発展を考えた。
【研究体制】
従来の要素技術偏重の研究室体制をやめ、達成すべき研究目標にしたがって必要な要素技術グループを組み合わせる柔軟な体制にする。これは、プロ野球チームが、内野手、外野手、ピッチャー、キャッチャーなどプロの意識と技を持った優秀な要素から構成され、一つのチームとして優勝という目標へ一丸となって邁進するのに喩えられる。一軍選手を育成する人材養成も大きな役割である。
これらは通総研に閉じた体制ではなく、産官学一体となって外部からの研究者、学生も含めて積極的な研究交流が可能なオープンラボを目指したい。優秀な“外人選手”も一層積極的に迎えたい。幸い、高給で契約できる任期付き任用も制度上可能になった。
【連携方策】
国内にとどまらず、国際的なレベルで民間の研究機関、企業、大学などとの連携を実りあるものにする為には積極的な研究者交流に重点をおいた研究交流が必須である。このためには、外部共同研究者への研究資金支援や学生に対する奨学制度など様々な研究支援体制の整備が不可欠であり我々を含めた関係機関の一層の努力が必要である。また、やりっぱなしの研究にならぬよう、研究評価制度の整備もあわせて重要である。
国際連携のプットフォームとして国際研究集会の創設
横須賀無線通信研究センターでの新たな研究会開発のため、研究課題と実施体制はも勿論、国際的な研究連携の具体化を検討した。具体化されたの一例は、国際連携のプラットフォームとなる国際研究集会(The International Symposium of Wireless Personal Mobile Communication)の創設であった。WPMC発足の経緯を簡単に紹介したい。
1997年(平成9年)10月、Professor Ramjee Prasadの招待を受け、オランダ、デルフト工科大学で開催されるColloquium on Indoor Communicationsへの参加、および同教授との共同研究打ち合わせため、大森センター長はデルフト工科大学を訪問した。
Ramjee教授は大の日本びいきでYRPとの共同研究に大変興味を示し、デルフト工科大学とYRC(当研究センタ)で共同開催でデルフト工科大学とYRCが中心となり、毎年、研究集会(Netherland-Japan Annual Symposium on Wireless Personal & Multimedia Communications)を開催することになった。交互にオランダと日本で開催し、第1回は横須賀無線通信研究センターで7月開催を第一候補とすることになった。Ramjee教授同様に、YRPの良き理解者であった東大の今井秀樹教授と相談してYRCが具体化することになった。
その後、名称から”Netherland-Japan Annual”はなくなってより国際的になった。第1回は1998年11月にYRPホールで開催で盛大に開催され、270名もの研究者が欧米から参加し、盛大な議論がおこなわれ大成功をおさめ、その後世界中で開催され、2022年には25周年記念大会がデンマークイで開催されている。
International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications -WPMC- | Global platform for convergence of wireless technology and business (wpmc-home.com)
創立1周年を迎えて
横須賀無線通信研究センターは、横須賀リサーチパーク(YRP)に本拠地を置く新たな組織として平成9年7月に発足した。約半年の小金井本所における準備の後、平成10年1月に第一陣がYRP1番館へ移転した。同年2月には、第2研究チーム、第4研究チームが移転し、7月に無線伝送研究室、10月に電磁環境研究室と移転を完了した。現在、当センターには職員21名、特別研究員5名、学生6名、派遣秘書5名の総勢37名が、心機一転新たな研究環境、研究戦略のもとYRPの中核的研究拠点を目指して研究開発に取り組んでいる。
第一陣が移転してきた頃は、YRPがオープンした直後で、カフェテリアも閑散としており、最寄の京急野比駅ものんびり、バスも数人が乗るだけといったいかにも都会から離れた小さな町といった雰囲気であった。しかし、1年を経た現在では40社あまりの国内外の企業が進出し、YRPの昼間の人口は約2000名に達している。カフェテリアは押すな押すなの大盛況、名称変更した新装YRP野比駅の朝はスーツ姿の場違いな集団で溢れ返り、臨時バスがでても乗りきれないほどの活況を呈する町に変貌した。
横須賀無線通信研究センターでは、このような産官連携に絶好な研究環境のもと、以下のような研究戦略を立て、YRP研究開発協議会を舞台にして産学官連携プロジェクトを進めている。
1。無線通信の国際的研究開発拠点を目指すYRPでの中核的役割を担う。
2。国際標準になり得るようなユーザ指向の戦略的研究開発を国際的な立場から産学官連携で行う。
3。欧米との協調と競争のため、アジア太平洋地域の研究開発拠点、人材育成拠点を目指す。
上記の新たな研究戦略のもとに、次の3つの大きな研究プロジェクトをYRP研究開発協議会へ提案し、産の参加を募り産官連携プロジェクトがスタートしたところである。
(1)ITS:高度道路交通情報システムの研究
(2)Skynet:成層圏高速無線通信ネットワークの研究
(3)MMAC:マルチメディア移動アクセス通信の研究

開設して1年後の研究室風景.