君津衛星管制センター

内房から外房へ抜ける国道,姉ケ崎-鴨川線清水トン ネルより田代林道を登ること約1km,わずかに開けた山 あいに,パラボラアンテナの林立する施設が突如として 現われる。通信・放送衛星機構,君津衛星管制センター (以後「センター」という。)は,南房総のほぼ中央,静 寂な山々に囲まれた自然あふれる環境の中にあり,実用 の通信衛星(CS-2),放送衛星(BS-2)の管制を行っ ている。

センターは,通信及び放送衛星の一元的管理を行うこ とを目的として設立された通信・放送衛星機構の衛星管 制センターとして,昭和57年8月に開設され,58年5月 からCS-2を,59年4月からBS-2の管制を開始しユー ザの方々の利用に供している。

センターが実施している主要な管制業務には,軌道及 び姿勢の維持管理,テレメトリデータの解析評価という ハウスキーピング:,中継器動作状態の監視,イベント( 蝕,センサ干渉等)の予報等がある。特に,年間90日に 及ぶ蝕の期間は,衛星が厳しい環境下に置かれるため, 緊張した空気の中で管制が行われる。これらの業務は, 管理部門を除く2部5課で分担され,効率よく処理され る。管制卓は,CS-2,BS-2に対しそれぞれ2人一組 5チームの輪番勤務体制がとられている。

宿舎は,センターから北へ約20km久留里の町にあり, 職員全員が集団で生活している。宿舎からセンターへは 2台のマイクロバスで通勤するため傘やコートは不用で あるが,朝寝坊をすると輪番勤務者送迎用の車を利用し て2時間の年休か,マイカー(禁止されている)を飛ば しての出勤となる。残業の場合,他に手段がないためタクシーを利用している。宿舎は世帯用と単身,独身用が 用意され,両者とも十分な広さがありゆとりある生活が できる。この広い空間を利用すればゴルフの練習も可能 で,畳を犠牲にしてのダウンブローの特訓で90台前半の 腕前に達した人もいる。

センターや宿舎のある君津市東部は,南房総とはいえ 冬寒く夏暑い内陸性の気候で多少住みにくいが,自然は 豊かで名花「安房千鳥」(野性ランの一種)の自生する地 である。早春から晩秋にかけて,蕗のとうに始まりわら び,ぜんまい,茸,山蕗等の山莱取りや山芋堀り等々の 実利を兼ねた楽しみがある。センターには時折野猿や野 兎が訪れるが,夏期には蝮が出没するため山歩きには十 分な注意を要する。山ばかりでなく海への便もよく,海 水浴や四季を通じての釣が楽しめる。一方,センターに は厚生施設は皆無で,宿舎の隣りにある市営のテニスコ ートを利用するか,近くにあるゴルフ場へ出かけること になる。センターには公式,非公式各種のコンペがあり コースに出る機会に恵まれている。


センターの全景

さて,最後に出向者の近況(筆者の独断による)を報 告する。村永孝次(所長)単身で先日着任,久留里の水 にも慣れ仕事も順調にすべり出している。大橋一(デー タ処理課長代理)目に入れても痛くない愛娘との散歩が 日課,有本好徳(同課主査)近々お嫁さんをもらう予定, 早々と世帯用宿舎へ引越完了。村田一夫(CS管制課主 査)釣に熱中,先日40cm1約1.5kgのメジナとクロダイ数 尾の釣果で増々エスカレート古津年章(BS計画課長代 理)仕事一筋,早朝テニスクラブの主要メンバー。竹内 誠(BS管制課主査)大型,大型特殊等の免許取得,電 波研からの出向者唯一の独身となる予定。森河悠(CS 計画課長)付き合いで始めたゴルフ,ミイラ取りがミイ ラになる感あり。鈴木良昭(本社課長代理)本社への出 向のため正確な近況は不明,3号系衛星への移行及び管 制に必要な施設の検討を行っている。


安房千鳥

 春の蝕を間近に控えた君津衛星管制センターより。


出向者一同(左から竹内、森河、古津、大橋、有本、村永、田村)

【資料】通信衛星計画課長 森河悠、「君津だより」、CRLニュース、1985.3 No.108