1982年、昭和57年に電波研究所は創立30周年を迎えました。

1982年8月号の電波研究所ニュースは、創立30周年記念特集号として発行されています。
当時の若井登所長の「設立30周年を記念して」が最初に掲載されいます。最初の部分のみ引用記載します。

はじめに
 電波研究所が,郵政省の付属機関として発足した昭和 27年8月1日は,単に設立記念日ということ以上に,大 きな意味をもった日といえます。すなわち,終戦直後か ら続いた度重なる所属及び名称の改変は,その日を境に して終止符を打ち,じ後一貫して,無線通信,電波計測 及び大気科学の研究を中心的課題とする当所の現在の態 勢が確立されだからです。当時は日本全体が,混沌から 秩序への道を歩んでいた時でしたが,それにしても誠に 時と処の宜しきを得た,新生研究所の発足であったとい うことができます。
 本稿を書くにあたり,当時の状況を伝える年史,懐古 談などを読み返してみて,幾多の厳しい周囲条件の中に ありながら,広い視野,高い識見と先見の明をもって方 針の策定にあたられ,今日の電波研究所の基礎を築かれ た先輩諸氏に対して,改めて深い敬意を表する次第です。
30周年記念事業
 さてこの30年間に当所はどのように発展してきたか。 この点については,昭和47年までは「電波研究所二十年 史」(既刊)に詳しく記載されており,それ以降は「最近 の十年間の歩み」(仮題,昭和58年刊行予定)に述べられ ることになっています。この年史発行を筆頭に,30周年 記念事業として次のような計画を実現し,またはその第 一歩を踏み出したいと考えています。
 (1)年史は,二十年史と構成,文体等を同じにして,そ れに続く十年史としてまとめ,昭和58年発刊を目ざ す。
 (2)所外の有識者の電波研究所に対する注文,意見など を聞く座談会を開催し(すでに5月に実施),その概 要を電波時報に掲載する。
 (3)例年設立記念日前後に行っている施設の一般公開に 際し,歴史的資料や写真,由緒ある機器などを特設 コーナーを設けて展示し,公開後もそれらを一室に 集めて保管する。
 (4)今秋に所員を対象とした講演会を開催し,電波研究 の歴史又は将来について,斯界の先輩から体験を交 えた高説を承って今後の方向策定の糧とする。
 (5)当所における電波伝搬研究のポテンシャルを集約し, 最新の知見も採り入れて,この分野の実務的なテキ ストを出版する。またできればこのような実務テキ スト作りを他の分野にも広げる。
 (6)電波研究所設立以前の歴史をとどめるため,前史の 編集にとりかかる(上田弘之元所長の提案に基づく事 業)。これは大正初期の逓信省まで遡り,平磯出張所 の発足,無線機器の規格制定から型式検定業務への 移行,検見川からの標準電波発射などを含める。し かしこの項目に関しては,資料も少なく現役の所員 だけでは到底まとめられないので,諸先輩の御助力 をお願いする。
 諸経費の大幅な節減を強いられている昨今ですが,せ めて上記の計画位は,30周年を有意義なものとするため の最低の事業として実現させたいと考えています。

続いて以下の方々が寄稿しています。
上田 弘之 「電波研究所に対するOBとしての提言」
大林 辰蔵 「理・工学の連繋」
園山 重道 「対 話」
湯原 仁夫 「ニュース発刊時のことについて」

詳細は参考資料をご覧ください。

【資料】「30周年記念特集号」、電波研究所ニュース、1982.8、No.77