URSIグラム・臼井送信所

 ウラシグラム(URSIGRAM)とは
 URSIにGRAMを加えた造語(他の例で,TELE+GRAM=TELEGRAM, 電報)である。電波の伝わり方に深 い影響がある太陽面上の現象(太陽フレアー,コロナ,黒 点,太陽電波雑音等の異常現象など)や地球及び地球の周 りに起きる現象(地磁気や地磁気嵐,電離層や急始電離 層じょう乱現象,宇宙線など)を観測して,そのデータ をコード化したものをウルシグラムとよんでいる。そし てこのウルシグラムはIUWDSの通信網を通じて観測者 相互で毎日データを交換し,無線通信回線の確保,電波 警報,電波予報などに役立てている。

 ウルシ(URSI)とは
 ウルシ(URSI)とは国際電波科学連合Union Radio Scientifique Internationale(仏語) の頭文字を取った略 称である。URSIの歴史は大変古く1919年(大正8年)に 出来た組織で,国際学術研究会議の第1回総会において, 電波伝搬及び無線通信に関する研究を促進するために設 立された。事務局はブラッセル(ベルギー)にあって, 現在の加盟国は38か国,総会は3年に1回開催され, 第 20回総会は今年の8月にワシントンで開催され,当所か らも代表が参加している。なお,日本は第2回総会(1927 年ワシントン)から参加を始め,日本学術会議が加入し, 電波科学研究連絡委員会が連絡対応をしている。
 URSIの常設サービス機関として,IUWDS(国際ウル シグラム世界日業務)があるが,当所の業務と深いつな がりがあるので別項で説明する。なお,URSIはITU(国 際通信連合)の下部組織であるCCIR(国際無線通信諮問 委員会)とも密接な連絡を保ち,CCIRから要請された 研究課題に応えている。

 ウルシグラム放送と放送スケジュール
 ウルシグラム放送の歴史
 世界で一番最初のウルシグラム放送は,1928年(昭和 3年)にURSIの勧告にもとづいてフランスで始められ, 現在ウルシグラム放送は,アメリカ,フランス,ソ連, インド,日本の5か国(7か所)で実施している。
 日本におけるウルシグラム放送は1932年(昭和7年)9 月から国際電気KK(KDDの前身)の小山送信所から放送 していたが,第2次世界大戦のため中断された。戦後, 電離層の研究や電波警報の必要性が高まるとともに,第 9回URSI総会の要請により1941年12月25日,当所の前 身である中央電波観測所で再開され,現在に至っている。 送信所は当所構内の一番南側の木造の庁舎に設けられ, 送信機は戦後の物資の少ない折なので方々から部品をか き集め,苦労して組立てられた。公称3kWの送信機であっ たが周波数も変動が激しく不安定なものであった。それ でも8,9MHzで1日に5回の放送を行っていた。

IGY が始まることになって,ウルシ通信網が整備,強化され, 10kWの送信機を購入し,8~23MHzの間で8波,1日15 回の放送を行った。人員も4名が9名に増員され,24時 間4交代の勤務となった。観測計画はIGYからIGC, IQSY等と進められてきた。この間アンテ ナの真近かにも家がおし寄せてTV,ラジオヘの受信障 害を与えるとの苦情が多く出され,とうとう昭和40年に 千葉県の電電公社臼井送信所へ送信業務を依託すること になった。これを機に放送は10,15MHz(5kW)で1日1回, 国分寺でキーイングを行うようになった。

【資料】「ウルシグラム放送のあゆみ」、電波研究所ニュース、1981.9、No.66
【外部WEBサイト】臼井送信所